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第21回

ひとSTORY

岩崎大輔さん(ピアニスト 作曲・編曲家)[後編]

岩崎大輔さん(ピアニスト 作曲・編曲家)[後編] 岩崎大輔さん(ピアニスト 作曲・編曲家)[後編]

新しいチャレンジ

’95年に開催された第18回夏季ユニバーシア-ド福岡大会ではマスコットキャラクターカバプーを題材とした「カパプーの絵かき歌」を作曲。’97年NHKテレビドラマ新銀河「愛情旅行」(齊藤由貴主演)の音楽を担当。志賀島のロケにも立会い、意欲的に制作に取り組んだ。またSONYプレイステーション用ゲームソフト 「リフレイン・ラブ」(日本初のトレンディードラマ仕立てのゲーム)の音楽担当。同タイトルのCDを発売するなど新しい分野にもチャレンジ。同年ガ―シュイン作でクラシックの要素もある「ラプソディーインブルー」をゲストピアニストとして福岡市民オーケストラと初共演した。’98年春日市スプリングホール、福岡市電気ホールにて「金獅子太鼓」と邦楽、ジャズ、クラシックの融合したコンサートをプロデュース。その後、多くのコンサート、イベント、CD・DVD制作を行う。’99年には全曲オリジナル曲の CD 『DAISUKE 2ND STAGE/岩崎大輔』を発表し、アクロスシンフォニーホール(福岡市)に於いてオリジナル曲中心の 『音楽生活20周年記念コンサート』を開催。ピアノ、ベース、ドラム、箏、ストリングス 総勢16人からなるオーケストラ編成をすべて自身で編曲。これを機に全国遠征、東京のミュージシャンとの共演も再開。音楽人生の1つの区切りとなった。

各方面からのオファーと新たな評価

’00年春日市弥生の里音楽祭のオ―プ二ング、ファイナルコンサートの音楽監督を務める。春日市とは縁があり、’95年より20年以上に渡り、ミュージシャン•プロデューサーとして多くの演奏会に起用される。’01〜’02年福岡市民芸術祭のオープニングコンサートの音楽監督を務め、管弦楽編成のアジアンポップスオーケストラ(中国、韓国、日本の民族楽器も含む)でアジアを意識した演奏会を行う。’04年初の ピアノソロアルバCD『アーバン・クロスロード』発表。(東京のスタジオにてオリジナル、映画音楽 ジャズ曲を収録。)また’04~08年 5回に渡り、童謡唱歌「うたの玉手箱」コンサートの音楽監督を務める。童謡のコンサートを手がける事は更に自身の音楽の領域が拡大したと実感する経験となった。そして’08年ポピュラー音楽初の福岡市文化賞を受賞。自らの受賞の喜びを噛みしめると共にこのジャンルの受賞に大きな意味を感じる。’09年福岡女子短期大学客員教授に就任。同年、韓国の歌手パク・ラオンのCD 『My Secret/Park Raon』に参加。日本CDデビューに貢献した。

アメリカ録音の初リーダーアルバム

’10年 約30年ぶりにニューヨークの地に降り立つ。マンハッタンの対岸ニュージャージ州フォートリーで行ったレコーディングはドラマーのアル•フォスター氏(ジャズ界の巨人ソニー•ロリンズ、マイルス•デイビス氏らと共演)、ベーシストのデビッド•フィンク氏(ジャズ界の巨人ピアニスト ハンク•ジョーンズ氏と共演)との共演。同年、完成したリーダーアルバムCD 「CORNER OF THE STREET」をリリース。(JAZZ LIFE 2010年5月号にインタビュー記事掲載)

本格派ミュージカル音楽

東京時代にもミュージカル音楽は小規模ながら経験していたが、‘14年には水城大提築造1350年記念事業福岡発市民ミュージカル『ASUKA』の音楽監督を務めた。今回は元東宝ミュージカル、劇団四季などで舞台監督を務めた藤村信一氏(現在、太宰府市在住)による書き下ろし脚本に20曲以上全てオリジナルで作編曲。準備から上演まで足掛け14ヶ月かけた。並行して他の仕事(演奏、作編曲、教務)もあり、寝る間を惜しんでこなす事となる。尺八、ビオラ、キーボード、ピアノ、ベース、ドラム、パーカッションの7人編成の生演奏を上演で行った。今春(‘15年)完成したCDアルバムでは尺八、ビオラを除いて演奏は全て1人でコンピューターで制作。ミキシング、CDジャケットのデザインを含めるとおよそ500時間を費やす自信作となった。

モチベーションについて・・・

ある方から聞いた話。「東京では岩崎大輔は伝説のピアニストと呼ばれている。何故なら、中央から地方へ戻ったミュージシャンでモチベーションを保ち続けている人は極まれだから。そうして岩崎大輔は伝説の、奇跡のピアニストと呼ばれているらしい。」モチベーションをキープ出来ている理由を本人に尋ねてみた。「アメリカにいた時思ったのは、あれだけの国の広さもあって一極集中ではない。音楽に関して言えば、ボストン在住の素晴らしいミュージシャンがいる。南のフロリダにもいるし、ロスアンジェルスにもいる。日本はアメリカよりも小さい国土ではあるが、東京だけしかいないと言うのは成熟した国では無いと思いたい。つまり、福岡、大阪、札幌、それぞれの都市に「あそこにはあいつがいるよね」と言われるミュージシャンがたくさんいるべきだと思う。福岡は言ってみれば九州の首都的な役目を担っている所がある。佐賀、長崎、熊本の人々がまず出て行ってみようと思う時に福岡を目指す事も多い。福岡で注目を浴びたら、中央の音楽事務所からスカウトが来たりもする。自分に関しては福岡に住んでいても東京に住んでいても遜色のない演奏をしているべきだと言うのがモチベーションになっていると思う。

これから

現在、東京のミュージシャンが来福するとピアニストとして指名される機会も多いが、今後は岩崎大輔をリーダーとして、そのまま東京や大阪に持って行っても通用するバンドを結成したい。また音楽の研究とその事から作品を新しく生み出す計画もしている。例えば、アメリカで生まれたジャズがヨーロッパに移動し、もう一度考え直される時代に来ていると感じるが、それに関する事やケルト音楽、バッハについて等など。それにプラスして昨年からチャレンジしている作詞活動を強化し、歌詞のある曲ももっと生み出したい。

終わりに

この記事の執筆中に偶然、初渡米前のコンサートの半券が出て来た。当時を思い返すと少しシャイな青年であったステージ上の岩崎さんは、昨今はMCも饒舌にこなす頼もしい音楽家として存在している。現在、メジャー活動、海外での演奏活動、音楽監督などなど、多くの経験を持った唯一無二の存在として、福岡の音楽シーンに貢献してもらっている。今もなお、次のステップへ挑戦するなど、音楽と真摯に向き合う姿勢を次の世代はぜひ引き継いで欲しい。

文:MARI OKUSU 2015.8.8掲載

コンサート プロデュース&音楽監督歴

  • ’95年 春日市スプリングホールにて 『 The Real Music 』オリジナル曲中心のコンサート開催。
  • ’96年 福岡市あいれふホールにてソロピアノリサイタル 『 九州の詩 』
  • ’96年 春日市スプリングホールにて 『 KASUGA Super Jazz4 』
  • ’98年 春日市スプリングホール、福岡市電気ホールにて「金獅子太鼓」と邦楽、ジャズ、クラシックの融合したコンサートをプロデュース。
  • ’99年 福岡市アクロスシンフォニーホールにて 『音楽生活20周年記念コンサート 』 開催。
  • ’00年 春日市弥生の里音楽祭のオ―プ二ング、ファイナルコンサート
  • ’04~10年 福岡県春日市主催 ふれあいジャズコンサート(計7回)
  • ’04~08年 童謡唱歌 『 うたの玉手箱 』 コンサート(計5回)
  • ’05年 福岡市福銀ホールにて 『 太平洋戦争終戦60年追悼コンサート 』 開催
  • ’06~07年 Jazz at Acrossコンサート(アクロス福岡主催)の企画、構成、演奏に携わる。(計3回)
  • ’09年 ふくおか県民文化祭2009 『 岩崎大輔とスペシャルオーケストラin桂川 』
  • ’09~11年 北九州ジャズコレクション(計3回)
  • ’10年 福岡県糸島市・市制誕生記念コンサート
  • ‘14年 『岩崎大輔とスペシャルオーケストラ in 桂川』
  • ‘14年 水城大提築造1350年記念事業 福岡発市民ミュージカル 『 ASUKA 』

その他主な演奏活動

  • ’94年 ベース奏者 リチャ―ド・デイビス ジャパンツアー’94参加。
  • ’97年 福岡市民オーケストラとガ―シュインのラプソディーインブルーを共演。
  • ’00年 北九州交響楽団ガ―シュイン作「ラプソディーインブルー」共演。
  • ’01~02年 福岡市民芸術祭のオ―プ二ングコンサート(計2回)※アジアンポップスオーケストラ結成。
  • ’07年 「デクアトロ オハス」(タンゴ、ラテンバンド)を結成。

主なCD参加&制作作品

  • ’92年 CD 『 コーヒーは愛の香り / 宇野ゆう子』(ビクター音楽産業)の制作
  • ’99年 CD 『 JINMEI PROJECT / 原田迅明 』
  • ’99年 CD 『 INAMIST / 田部俊彦 』の演奏とプロデュース担当。
  • ’99年 CD 『 島に咲く花 / 群青の海 』制作。
  • ’99年 CD 『 シンビエント・ワールド /TOMOKO 』 箏奏者の作・編曲プロデュース担当
  • ’01年 CD 『 メモリーズ / JINMEI PROJECT 』
  • ’03年 CD 『 NADECICO /中本マリ 』 に参加。
  • ’03年 福岡県赤池町童謡アルバム 『 うたがき 』制作。
  • ’04年 和太鼓奏者 筑紫寿楽(博多金獅子太鼓) 『獅子咆哮 』制作。
  • ’05年 ジャズボーカリスト河原厚子アルバム 『ウォータースプライト 』制作。
  • ’06年 コントラバス奏者 深沢功アルバム 『 ミュージック・ミュージック 』
  • ’09年 韓国歌手パク・ラオン 日本デビューCD 『My Secret / Park Raon 』 制作協力。
  • ’11年 CD 『 ファゴットランド / 埜口浩之 』(ファゴット奏者) 制作。
  • CD 『 My Romance Car / Park Ra On 』 韓国歌手パク・ラオン2枚目のCDアルバムを全面的にサポート。
  • ’12年 CD 『 URGE / JINMEI PROJECT 』
  • ’14年 CD 『 KARAN / 森下香蘭 』 (ビオラ奏者) 制作
  • ’15年 CD 『 ASUKA 』 (ミュージカル“ASUKA”より) 制作
  • その他~韓国において9作品のC Dアルバム制作。

その他主な作曲活動

  • ’93年 ピアノ曲「海峡の詩組曲」、和太鼓組曲「天翔ける人」を作曲。
  • ’00年 福岡県春日市文化スポーツ振興公社の委託を受け交響曲『 春日 』作曲。
  • ’02年 交響詩 『 菅原道真 』 発表。